突発性難聴は速やかな受診が重要
突然、耳が聞こえにくくなる、耳鳴り、耳が詰まったような閉塞感を起こし、めまいや吐き気・嘔吐などを伴うこともあり、症状の内容や程度には個人差があります。
症状が現れてからできるだけ早く耳鼻咽喉科を受診し、適切な治療を受けることで回復できる可能性が高くなります。適切な治療を受けた場合、約1/3は完全に回復できますが、1/3は部分的な回復となり、1/3は回復しないとされています。
なお、治癒後の再発はほとんどないと考えられています。日本では毎年、約35,000人が突発性難聴を発症しており、30~60歳の発症が多い傾向がありますが、それ以外の年代でも発症します。なお、性別や職業などによる発症の偏りはありません。
原因はまだよくわかっていませんが、血液循環の障害、感染、自己免疫疾患などの関与が指摘されています。ストレス解消や十分な休息と睡眠、騒音を避けるなどは予防に有効とされています。
早期発見し、できるだけ早くステロイドや血管拡張薬、代謝改善薬、ビタミン剤などによる適切な治療を受けることが重要です。
耳に生じやすい症状
耳の痛み
外耳炎・中耳炎・鼓膜炎といった耳の疾患に加え、顎関節症や喉の炎症によって耳の痛みという症状を起こすことがあります。炎症を悪化させてしまうと手術が必要になる可能性もありますので、耳の痛みに気付いたら早めにご相談ください。
また、激しい痛みを生じる場合には、帯状疱疹も疑われます。帯状疱疹は治療が遅れると激しい痛みが長く続く帯状疱疹後神経痛を発症するリスクが上昇しますので注意が必要です。
耳の痛みにめまい、顔を動かしにくい、しびれがあるなどの症状が伴う場合には、特に速やかな受診が必要です。
耳だれ
耳だれは耳の穴から液体が出てくる症状で、サラッとした水のような液体から、粘り気のあるもの、血液が混じったものなど内容は様々です。
耳だれの原因は、耳かきによる外傷や外耳道湿疹、中耳炎、外耳や中耳の腫瘍などがあります。また耳垢が湿っている体質の場合、耳だれのように見えるものが出てくるケースもあります。
中耳炎による耳だれは、悪化して鼓膜に穴が開いてしまい、その穴から中耳の膿や分泌液が出てきてしまっている状態です。また、腫瘍による耳だれの場合、悪性である可能性もあります。
耳かきによる外耳道の外傷の場合も、感染リスクが高い状態です。耳だれに気付いたらできるだけ早く当院までご相談ください。
聞こえにくくなった
突然音が聞こえなくなった、聞こえが悪くなってきている、耳が詰まったように感じて聞こえにくい、テレビなどの音量が大きすぎると言われたなど、聞こえが悪くなった状態を難聴と呼びます。高齢になって聞こえが悪くなる加齢性難聴以外にも、突然聞こえが悪くなる突発性難聴、中耳炎やメニエール病の症状として起こる難聴などがあります。
加齢性難聴は日常生活に不便を感じるようになってからの受診で構いませんが、片耳だけ聞こえが悪くなった・突然聞こえが悪くなった、めまい・耳鳴り・耳だれ・耳の痛みを伴うなどの場合には、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診してください。
耳鳴り
無音の環境でも音が聞こえてくる状態で、自覚的耳鳴と他覚的耳鳴に分けられます。自覚的耳鳴はご自分にしか聞こえませんが、他覚的耳鳴は脈や筋肉のけいれんなど体内で実際に生じている音が原因となっており、他者でも聞くことができる場合もあります。
他覚的耳鳴は正常な体内の音を感じ取っている場合もありますが、血管や耳などの疾患による異常音が聞こえている可能性もあり注意が必要です。
自覚的耳鳴は、難聴の症状を伴いやすく、特に突然耳鳴りを起こすようになった場合には難聴が強く疑われます。
中耳や外耳の疾患によって耳鳴りを起こしている可能性も考えられますので、受診して原因を確かめることが重要です。
なお、ストレスなどによって心因性の耳鳴りを起こすこともあります。
耳が詰まる
耳に水が入っているような圧迫感があり、聞こえにくさを伴う症状です。外耳に原因がある場合、水や異物が入って生じる他にも、過剰な耳かきによる外傷やそれに伴う炎症による腫れ、鼓膜に分泌液や耳垢などが付着して生じるなど、様々な原因が考えられます。
中耳に原因がある場合、中耳炎や加齢・体重減少による変化などが疑われます。内耳では、突発性難聴・急性低音障害型感音難聴・メニエール病で耳が詰まる症状を起こすことがあり、できるだけ早い耳鼻咽喉科受診が必要です。
特に、めまいを伴う場合や、低音の聞こえにくさ、高温の不快感が強い場合は速やかに受診してください。
めまい
めまいは内耳や脳などに生じた問題によって起こる症状です。内耳の場合、平衡感覚に関与する機能に障害が起こり、バランス感覚に支障が生じてめまいを起こします。めまいを起こす内耳の疾患は複数あり、めまいの症状も様々であり症状の感じ方にも個人差があります。
また疾患によっては、他の症状を伴うこともあります。当院では、眼振検査や聴力検査、重心動揺検査などを行って、内耳・小脳・脳幹の異常がないかを確認し、原因や状態を確認して、適切な治療につなげています。
めまいの症状がある場合には、早めにご相談ください。
代表的な耳の病気
耳垢
耳垢は基本的に奥から手前に向けて移動して自然に排出されますので、手前を優しく拭く程度の耳掃除を2週間に1回行うだけで十分です。また、幼い子どもの場合は3か月に1回程度でとどめてください。
奥までの耳掃除を行うと痒みを起こしやすくなり、それを解消するために頻繁に耳掃除をして耳の中に細かい傷ができ、耳垢を増やすことになります。また、感染リスクも大幅に上昇します。
耳垢には、乾いた乾性耳垢と湿った軟性耳垢があり、どちらのタイプになるかは遺伝で決まり、日本人の約8割は乾性耳垢とされています。
軟性耳垢の方、子ども、高齢者は定期的な耳掃除が必要ですが、綿棒や耳かきでの耳掃除では耳垢を奥へ押し込んでしまうこともあります。耳鼻咽喉科では、保険診療による耳掃除を行っており、安全に耳をきれいにできます。
当院では必要に応じてファイバースコープなども用いながら状態をリアルタイムで確認して耳掃除を行っていますので、耳掃除に不安がありましたら気軽にご相談ください。
外耳炎
過剰な耳掃除、入浴や水泳などによって外耳道に感染が生じて炎症を起こしている状態です。
耳の痛み、耳だれ、外耳道の腫れなどを起こします。真菌(カビ)による外耳炎は抗真菌薬による適切な治療を受けても治るまで長期間かかることがあります。
診断のために外耳道や耳周辺を観察し、組織を採取して細菌検査などを行って原因を確かめます。耳の中をきれいにして洗浄し、軟膏・点耳薬・抗菌薬・抗真菌薬など、原因に合わせた治療を行います。軽度の炎症を放置していると痛みや痒みが気になって何度も触れてしまい、悪化させてしまう場合がありますので、疑わしい症状があったら早めにご相談ください。
外耳道真菌症
外耳道に真菌(カビ)が異常に繁殖した状態です。
過剰な耳かきなどで外耳道が繰り返し傷付いた部分に真菌が繁殖し、痒みや痛み、耳だれ、耳が詰まったような感じ、難聴などの症状を起こします。耳だれの分泌液などを採取して真菌感染の有無を確認します。
耳の中をきれいに清掃し、抗真菌薬軟膏や点耳薬などによる治療を行います。
外耳道異物
外耳道に異物が入った状態です。虫が入ってしまうというケースもありますが、耳掃除で使った綿棒や耳かきの1部、髪の毛などもよくあります。子どもの場合には、玩具の1部やBB弾、種、石、粘土、小さなキャップなど手近にあるものを好奇心から耳に入れて取れなくなり、耳鼻咽喉科を受診するというケースがよくあります。
耳の痛み、異物感を生じますが、奥まで入ってしまって鼓膜が損傷した場合には聞こえが悪くなることもあります。
また子どもの場合、外耳道異物があっても特に症状を訴えず、発見が遅れることもあります。炎症などを起こすリスクも高いので、耳に異物が入った場合には速やかにご相談ください。
中耳炎
鼓膜を境に手前を外耳、奥が中耳となり、鼓膜よりも奥で炎症を起こしているのが中耳炎です。
主な症状には、耳の痛み、耳鳴り、耳だれ、聞こえにくさなどがあります。風邪などの喉や鼻の炎症が内耳にまで広がって急性中耳炎になり、治しきらずに治療を中断してしまうと慢性中耳炎になります。
他にも中耳に滲出液が貯留している状態の滲出性中耳炎、鼓膜が耳小骨に癒着してしまう癒着性中耳炎、球状の組織が周囲の骨を破壊する真珠腫性中耳炎などがあり、悪化した場合には手術が必要になります。
中耳炎になったら耳鼻咽喉科を受診して炎症がしっかり治るまで治療を続けることが重要です。
外傷性鼓膜穿孔
外傷によって鼓膜に穴が空いてしまっている状態です。耳かきなどで鼓膜に穴を開けてしまう直達穿孔と、ダイビングなどによる気圧の急激な変化や頭部への強い衝撃によって生じる介達性穿孔に分けられます。耳の痛み、耳が詰まるような感じ、耳鳴り、耳出血などを起こしますが、鼓膜だけでなく、耳小骨にも離断などのダメージが及び、聞こえが悪くなってしまうこともあります。
鼓膜を観察した上で聞こえの検査を行いますが、頭部への強い衝撃によって生じた場合などではCT検査をはじめとした画像検査が必要になります。
鼓膜には再生能力がありますので穿孔が小さい場合は自然閉鎖が期待できますが、感染している場合には、点耳薬や内服薬による治療が必要です。
穿孔が大きい、または耳小骨離断などがある場合には、手術を検討します。外傷性鼓膜穿孔が疑われる場合には速やかに受診してください。
内耳炎
中耳炎が内耳にまで広がった状態です。慢性中耳炎などから生じる他に、難治性の急性中耳炎による髄膜炎が原因となって生じる場合もあります。
内耳には平衡感覚機能がありますので、難聴や耳閉感・耳鳴りの他にめまいや立ちくらみといったバランス感覚の乱れを生じることがあります。内耳炎を起こした原因疾患を見極め、適切な治療をできるだけ早く受けることが重要です。
難聴
聴覚機能が低下した状態を幅広く含みます。外耳炎や中耳炎によって生じる伝音難聴と、高齢になると生じる加齢性難聴(老人性難聴)、突発性難聴、メニエール病などの感音難聴に大きく分けられ、原因によって治療方法は大きく変わります。耳鳴りやめまいなどを伴う場合もあります。
加齢性難聴では、年齢を重ねると生理的な変化によって聞こえが低下していきます。
難聴で、特に早期発見と治療が重要なのは突発性難聴です。突発性難聴は、回復できないケースもある疾患であり、早期に適切な治療を受けることで回復の可能性が高くなるとされています。突然、聞こえが低下した場合はできるだけ速やかにご相談ください。
耳鳴り
耳鳴りは内耳の障害によって起こるケースがほとんどを占めますが、外耳や中耳、中枢の障害によって生じる場合もあり、他にストレスなどによる心因性の耳鳴りを起こすこともあります。
耳鳴りを完全に消すことは困難なことが多いですが、原因疾患の治療によってある程度緩和できる場合があります。