舌下免疫療法とは
微量のアレルギー物質をゆっくり体内に吸収させることで、アレルギー体質を改善させ症状を緩和させていくアレルゲン免疫療法です。
エキスや錠剤を舌の下に入れて少し待った後に飲み込むという服用方法から舌下免疫療法と呼ばれています。現在、日本ではダニアレルギーとスギ花粉アレルギーの舌下免疫療法が可能となっています。
一般的な経過では、治療開始後、約3か月で効果が現れはじめ、その後も徐々に改善していき、最低でも3年の治療期間が必要とされています。なお、4~5年の継続治療を行うことで7~8年の効果が持続したという報告があります。
スギ花粉の舌下免疫療法は、花粉の飛散時期に治療をスタートできませんので、治療スタートは6~12月に行われます。ダニの舌下免疫療法はいつでも治療を開始できます。
当院の舌下免疫療法では、ダニアレルギーにミティキュアRを、スギ花粉症にシダキュアRを処方しています。
※シダキュア®開始時の用量である2,000JAUの錠剤は、製造元の製薬会社より出荷規制となっており現在開始ができません。(2024年現在)
すでに開始後で5,000JAU錠のみ必要な方への処方や、ダニ舌下免疫療法の開始は可能です。
皮下免疫療法との違い
アレルゲン免疫療法では舌下よりも以前から皮下免疫療法が行われてきています。皮下免疫療法は医療機関で注射による投与を行いますので、心身への負担や通院頻度などの制約がありました。
舌下免疫療法は、こうした様々な負担が軽減され、より多くの方が気軽に受けられる治療法となっています。
※当院では皮下免疫療法は行っておりません。
皮下免疫療法
- 毎回の投与には医療機関受診が必要
- 注射による投与であり、痛みなど心身への負担がある
- 治療開始から通院頻度の高い期間がしばらく続き、時間に余裕がないと続かない
- アナフィラキシーの頻度が舌下免疫療法よりも高い
舌下免疫療法
- 痛みがない
- 自宅で服用が可能であり、通院頻度が大幅に減る
- アナフィラキシーの頻度が皮下免疫療法よりも低い
舌下免疫療法が適している方
- 問診と血液検査で、ダニまたはスギ花粉アレルギーと診断を受けた
- 3〜5年以上の継続通院による主治医の指導を受けられる
- 毎日の服用を正しく、欠かさず行うことができる
舌下免疫療法が適さない方
- 5歳未満
- 重度の気管支喘息がある
- 悪性腫瘍、免疫不全などの既往歴
- 免疫抑制剤による治療を受けている
舌下免疫療法の副作用
アレルゲン(アレルギー物質)を微量ですが体内に取り入れる治療法であることから、まれにアナフィラキシーショックを起こすことがあります。アナフィラキシーショックは重篤なアレルギー症状であり、速やかに適切な治療を受ける必要があります。アナフィラキシーショックは、アレルゲンを摂取してから30分以内に起こります。
舌下免疫療法でアナフィラキシーショックを起こすリスクが最も高いのは初回服用時ですので、初回の服用を院内で行って、そのまま30分過ごして頂き、状態を慎重に確認しています。
国内での舌下免疫療法による重篤な全身症状の頻度は、ダニ舌下錠で0.0%-0.5%、スギ花粉舌下錠が0%と報告されています。(アナフィラキシーガイドライン2022)
これらの重篤な副作用は極めてまれですが、口の中や耳のかゆみ、喉のイガイガ感は比較的多く見られます。これらの症状は一時的で、治療経過とともに出現しなくなることが多いです。
アナフィラキシーショックとは
じんましん、息苦しさ、呼吸困難、血圧低下、意識混濁、頻脈、顔面蒼白、口内炎、腹痛、嘔吐など、複数臓器に全身性の重篤なアレルギー症状を起こしている状態で、すぐに適切な治療や処置が必要です。
舌下免疫療法の開始時期
スギ花粉症
スギ花粉飛散時期には治療を開始できず、6~12月の期間内に治療をスタートさせます。翌年の花粉飛散シーズンの継続投与は問題なく行えます。効果を期待できるのは、翌年の花粉飛散シーズンからです。
ダニアレルギー
通年で治療開始可能です。一般的に、約3か月治療を継続した時期に効果を実感しはじめるとされています。
通院について
舌下免疫療法では、毎日の服用を継続して行う必要があります。治療開始後は週に1回の通院が必要ですが、問題がなければ徐々に通院間隔を延ばしていきます。
効果を実感しはじめるのは通常、治療開始から3か月程度経過した後とされており、その後もゆっくりと緩和・軽減されていきます。
ある程度持続した効果を得るためには最低でも3年以上の継続投与が必要であり、服用期間は定期的に通院して状態の確認や処方を受け、症状緩和の程度に合わせて薬の量を減らすといった処方の変更を行います。
治療の流れ
Step1初診
問診でアレルギーの症状について伺って、既往症や処方されている薬などについても確認します。血液検査を行って、スギ、またはダニのアレルギーがあるかを確認します。
スギ、またはダニのアレルギーが血液検査で確認され、舌下免疫療法が適していると判断され、患者様もその治療を希望される場合、丁寧に治療内容などについてご説明しています。
治療が適切と判断された場合、再診時に治療をスタートできます。
Step2治療開始
再診時に舌下免疫療法の投与を開始します。
初回投与ではまれにアナフィラキシーショックを起こす可能性がありますので、院内で投与して30分程度そのまま過ごして頂き、状態を慎重に確認しています。
初回投与で問題がなければ翌日からはご自宅で舌下投与を継続します。
※初回投与予約時間に関するご注意
投与後の30分を院内でお過ごし頂く時間や説明にもある程度の時間が必要となりますので、舌下免疫療法初回投与の予約は最終受付よりも90分以上早い時間となります。
Step3定期的な受診
舌下免疫療法開始後、副作用が現れないか、正しく投与ができているかを確認する必要があります。当院では、治療開始直後は週に1回の通院が必要ですが、問題がなければ徐々に通院間隔を延ばしていきます。
治療効果について
舌下免疫療法は、誰にでも同じように効果が見込める治療法ではありません。
これまで、2~3割程度は効果を得られないという報告がされたこともあります。これは7~8割には改善効果があったということであり、過半数の方に効果が期待できます。
ただし、舌下免疫療法で効果を得られるかどうかを事前に調べることはできず、実際に長期間服用してからでないと判断できません。